続、自分の子宮を見た女


起きて、わかる?
子宮、見たいんだよね。こっちだよ。
術後、麻酔がかかっていたが、自分の子宮を見るのだったと、ゆっくり目を開けて、声のするほうに頭をかたむける。
銀色のバットに私の子宮があった。
思っていたのと違う。
私は子宮というものは、もっと頼りのない袋のような入れ物だと思っていた。
違うんだ。
ごろんとしていた。丸くて立体的だった。こぶし大で、真っ赤だった。意思を持っているように見えた。
これが?
私たち、子宮筋って習うの。看護師さんが教えてくれた。
子宮って筋肉なのか。鶏卵大の筋肉。私のは少し大きいみたいだけれど、卵の大きさの筋肉。大きい時にはスイカよりもおおきくなるのか、これが。
卵巣と卵管は残しますって話だったけど、そんなことできるの?くっついているんじゃないの?どうなっちゃうの?
ふにゃふにゃの袋の先から伸びて腕みたいにくっついているのが卵巣だと思っていたので、子宮だけ取るっていうのが想像できなかった。卵巣は血管がつながっているから大丈夫らしいけど。血管から栄養をとって、ホルモンも出してくれる。すごいな、体って。
でも、これか。これなら子宮ってすぐわかる。心臓がわかるみたいに。
お前が悪さしたのか、こんなに私を苦しめて。まったくもう。
でも、すごいね。君が赤ちゃんをはぐくむベットなんだ。なかにきれいな羊水が入って、赤ちゃんを10か月も育んでいるわけだ。大したものだ。昔の人なんか6人とか7人とか産んだわけだから、君はそのたびに伸びたり縮んだり押し出したり。やはり筋肉のなせる業なんだな。産後子宮が縮んでいく、後陣痛と言ったか、あれはすごく痛かったけど、実は筋肉痛だったのか。そうだったんだね。帝王切開にも耐えて、なんども復活してきたわけだ。
君はよく頑張った。
今までお疲れ様でした。
そしてありがとう。
お別れだけど、元気でね!
私も生まれ変わったみたいに感じるよ。


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